クリスマスケーキの甘くない事情

すっかり寒くなりました。北海道では最高気温がマイナスの日が続いています。そんな中、この季節の楽しみといえばクリスマス。家族やパーティーなどでケーキを食べる人も多いのではないでしょうか。

今回はクリスマスケーキに欠かせない食材「いちご」について考えてみました。

※この記事は音声でもお楽しみできます

いちごの価格が3割も高騰している

ニュースで今年のイチゴ価格が高騰しているという記事がありました。

参考:クリスマスケーキ、甘くない原材料高 イチゴ卸値は3割(日本経済新聞)

参考:業務向けイチゴ不足感 Xマス商戦迎え2割高(日本農業新聞)

原因は資材や燃料費、そして人件費や物流コストなどなど。

その中でも特に気になったのがイチゴの作付け品種の転換についてです。

一般的にケーキに使用される業務用イチゴは、小粒で大きさが揃っている品種のニーズが高いとされています。栃木県の「とちおとめ」が代表的な品種です。

しかし、いちごの主要生産地の栃木県では「とちおとめ」から粒が大きくて病気にも強いと言われる「とちあいか」への作付け変更が多くなりました。その結果、今までクリスマスケーキに使用していた「とちおとめ」が品薄状態になってしまった。

つまり需要と供給のバランスが崩れた結果、品薄状態になっているのが大きな原因の1つになっているということですね。

ではなぜ生産者さんは品種の転換をしてしまったのでしょうか。

「とちおとめ」生産をやめた背景は?

生産者が育てる作物を選ぶときに考えることは大きく2つあります。

1つ目は、生産した作物は「売れるのか」ということ。多分、ほとんどの農家さんはボランティアで作物を育てているわけではありません。収入を得るためにはお金を出して買ってくれる人がどのくらいいるのかを考えます。

2つ目は「効率よく生産できるのか」ということ。作物を生産するには様々なリスクとコストがかかります。いちごを育てる場合、播種・育苗・管理・収穫・出荷といったように幾つも工程があります。そして病気・害虫対策などにも気を付けなければいけません。この中で最善を尽くすにはどれだけコストとリスクを減らせるかは重要になってくる。その意味でも品種選びはとても大切ですね。

作物の生産も他の企業や会社と同じ。少しでも良い経営をするためには、売れるものを効率よく生産する必要があるんです。

私もオーガニックで野菜を育てているので、その気持ちはとても理解できます。

クリスマスケーキに使用されている「とちおとめ」より、大粒で病気にもなりにくく収量が安定している「とちあいか」に作付け転換するのは当然かも知れません。

【基本】イチゴという野菜について

そもそもイチゴとはどんな作物なのか。

いちごはバラ科イチゴ属の多年生で北アメリカ・南米チリが原産地。 生育適温は18℃ー25℃ です。

とちおとめとちあいかのような一季なりイチゴの旬は12月から6月ごろ。

甘味があり果物としての認識が多いが草本生の植物で野菜の分類になっている(果菜類)。

余談ですが、リンゴや梨・サクランボ・桃などもバラ科の果樹ですね。

日本には江戸時代末期にオランダから観賞用として伝来したのが始まり。そのオランダでは南米のチリ種と北米のバージニア種がかけ合わさってできたものとなっています。

その後、明治時代になってからアメリカから栽培用の品種を導入して日本の風土の中で選抜育成を繰り返したという歴史がある。当時の有名な品種に「福羽」というものがありました。今の日本で栽培されている品種のご先祖様ですね。

「とちおとめ」&「とちあいか」それぞれの特徴

最後に今回の記事に出てきた2品種のいちごの特徴を見てみましょう。

とちおとめとちあいか
やや小粒で果汁が多く味が濃厚大粒で果肉が詰まってまろやか
酸味のバランスが良い甘味が際立っている

それぞれ特徴がありますが、好みが分かれるところだと思います。個人的にはケーキなどのトッピングには小粒の「とちおとめ」。生食でストレートな食感を味わいたいなら「とちあいか」になります。

どちらにしても旬のいちごは美味しいです。これから寒い日が多いシーズンですが、旬の食べ物を味わって元気に過ごしたいですね。

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