なぜ高い!?オーガニック野菜の誤解と真実

オーガニックの野菜は値段が高い。そういうイメージがあるのではないでしょうか。

でも、本当にそうなのか?

今回は北海道で14ヘクタールを自然栽培で生産する農業人の私が、独自の目線で考察していきます。

慣行栽培と自然栽培の違いとは

まず最初にみなさんが一般的に食べている野菜を考えてみましょう。日本の場合、約90%以上は慣行栽培と言われる農法で生産されています。

気になる方はこちらをチェックしてみてください。

参考:「有機農業をめぐる事情」農林水産省

慣行栽培とは簡単にいうと、化学肥料や農薬を使用して生産された作物を意味します。農家さんによって方法は様々ありますが、基本的には同じと言えるでしょう。現代の安定した食料の供給ができているのは、農薬・化学肥料・機械設備・品種改良など長年かけて進歩してきた賜物と言えるでしょう。

それに対して自然栽培とは、化学肥料や農薬を使用せず圃場の育成期間中は有機肥料も使用しない。畑にあるものたちだけの状態で育てる方法です。(これも生産者さんによって栽培方法は様々です)地域や農家さんによってやり方は違いますが、概念として大きな違いがハッキリと分かれています。

では、なぜ栽培方法によって野菜の価格が変わってくるのでしょう?

価格を決める基本的な仕組

まず一般的なモノの価格が決まる仕組みを考えてみましょう。

基本的な考えとして「モノの価格」というのは需要と供給のバランスで決まる(買い手と売り手)。売るモノがたくさんあっても買う人が少なければ価格は下がるし、逆に売るモノが少なくて買いたい人が多いと価格は上がっていく。野菜などの青果や生鮮食品の場合、消費期限が短ければこ需要と供給による価格変動の影響を受けやすいでしょう。ここで考えたいのは「供給」。つまり野菜の生産量です。

では農法の違いによって生産量はなぜ変わってくるのでしょう。

慣行農法は生産効がとても良い

慣行農法で野菜を生産する場合、化成肥料と農薬を使用して作物を育てるので効率よく野菜を栽培できます。

それは化成肥料によって野菜の成長を促進させ、農薬による害虫駆除や除草などをすることができる。それによって収穫量が増え、人件費などコストも抑えられるんですね。

つまり、生産にかかるお金が安く済み野菜がたくさん収穫できる。

そのため安定した供給が実現されやすく、価格も抑えられるというわけです。では自然栽培などのオーガニック野菜はどうでしょうか。

オーガニック野菜は非効率を極めている

農薬や化成肥料を使用しないオーガニック栽培では、慣行農法のよう効率よく生産することができません。野菜の成長に必要な栄養分は、自然環境や畑の状態によって全て決まります。そのため、栄養不足で大きくなれない野菜が増える。

野菜たちが成長期に栄養不足になると、害虫や雑草に負けてしまいます。除草剤を使用しない畑では、雑草の成長に方が野菜よりも成長が早く背が高くなる。そのため野菜は雑草の影になってしまい、成長に必要な日光を浴びられなくなってしまいます。

野菜などの植物は基本的に光合成によって育つ。日光を浴びないと成長に大きなダメージになってしまうんです。それを回避するため除草は人の手で全て行うことになる。除草には人手と時間がものすごくかかります。

そのため生産にかかるコストは上がり、収穫量にも大きな影響を与えてしまうんです。

オーガニック野菜が高いのは消費者のせい?

慣行農法とオーガニックの生産では、かかるコストと収穫量にが大きく差があることがわかります。ただ、農法の違いだけが野菜の価格に反映されているとは言い切れないでしょう。

はじめに書いたようにモノの値段は「需要」と「供給」によって決まります。現在の市場で出回っている野菜の90%は慣行農法によって栽培された作物だと言われている。そして買い手である私たちは、それを好んで選んでいるのです。

お客さんである私たちが欲しいと望んでいるものを、生産者さんが育てる。当たり前ですが売れない野菜を育てたいと思う生産者はいません。オーガニック野菜を育てる人を増やし、安定した供給ができるようになれば、もっとオーガニック野菜の価格は抑えられるようになる。

本当はお買い得なオーガニック野菜

さらに言うと、野菜の価格は日々変動しています。そしてオーガニック野菜の方が価格が低くなることもある。

そのタイミングを決めるのは「旬」の時期です。日本のような四季がはっきり分かれる国では、野菜の価格に顕著に出る。施設栽培は例外になりますが、野菜などの植物は自分の特性に合った季節や気候などの環境で育ちます。春には菜の花や筍、夏にはトマトやピーマンといったような感じですね。

そして産地による違い。日本は縦長な国土なので、北海道と沖縄では気候に大きく差があります。そのため、気候と産地によって収穫時期や作物の種類が変わります。その違いが野菜の価格にも反映されることが多い。市場では品薄で価格が高騰していても、地方のオーガニック農家さんではたくさん収穫できていることがある。

この逆転現象を知るためには、野菜の本当の旬を知っておかなければいけません。つまり、旬がわかれば本当の野菜の価格が見えてくる。そして、本当に美味しい野菜に出会うチャンスがわかってきます。

野菜は生き物。

育った環境が良ければ、素直にその姿に現れるでしょう。

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