「プラスチック」は悪者か?農業のゴミが問題になっている理由

おいしい料理には素材が大事。とてもシンプルな考えだけど、その素材(食材)の何が大事なのか?

近年よく話題になっている「脱プラスチック」がとても関係しているので、豊かな食生活に興味がある人はチェックしてみましょう。

今回の参考記事:[論説]農業と環境負荷 「出口」意識した生産へ(日本農業新聞)より

農業から出るプラスチックごみ

食物の生産にはたくさんの資材が使われています。その中でも今とくに問題視されているのが「プラスチック」です。これは生産活動を効率的に行うためにはとても重要な役割を果たします。そのため多くの農家さんがプラスチック資材を使うようになり、結果として食料の安定した供給をできるようになりました。

しかし、その安定した食料を得た結果として新たな問題が出てきた。それが「環境問題」です。

農業に使用されているプラスチック資材は、ビニールハウスやマルチ資材など多数あるけれど、特に問題なのが「被覆肥料」と言われるプラスチック資材です。

肥料にプラスチック? そう思う人もいるでしょう。

まずは「プラスチック被覆肥料」とは何か調べてみましょう。

効果抜群の魔法的な資材だ

被覆肥料とは簡単に言うと次のようなものを指します。

肥料粒の表面を、水の浸透が遅い被膜で被覆(コーティング)することにより、成分 の溶出をコントロールすることができる肥料である

農林水産省:緩効性肥料の利用技術(肥効調節型肥料)より抜粋

イメージで言うと、作物の成長に合わせて肥料成分が少しづつ溶け出してくれる感じです。

本来ならば作物の状況などを見ながら何度も肥料を分けて与える必要があったところ、この資材を使うと少ない回数で済む。しかも無駄が出にくく与える量も調整できる。

軽労化、施肥量の削減、養分の流出を防止できる、といった一石三鳥とも言える魔法のような資材です。

こんなに便利で効果抜群の資材だけど、一体何が問題なのでしょうか。

農業からでたゴミが食卓に

とてもメリットがあるプラスチック被覆肥料ですが、その最大のデメリットが被膜殻の流出です。

肥料成分をプラスチック等でコーチングしている被覆肥料は、肥料成分が溶け抱いた後そのままの状態で分解されずに残る。その残った細かいプラスチックが雨によって河川などに流され、その後は海へと流出して行きます。

海に流出した後どうなるか?

海にはたくさんの生き物が住んでいます。その住処に陸地から流された細かいプラスチックをプランクトンなどと一緒に飲み込んでしまう。そして体外へ排出できず、その魚たちは生きていくことになる(死んでしまうことも)でしょう。

ここまできたら理解できたと思いますが、私たちが食事している魚介類などの海鮮は陸地から出たゴミの中で生活していることになりますね。

農作物の効率化のために行なった被覆資材の活用が、海の環境に大きなダメージを与えてしまい、自分たちの食事にも危機をもたらしている。そういう事になります。

ではどうすれば良いのか?

豊かな食に必要なキーワード

日本ではこのプラスチック被覆肥料の対策(水田)として、次のような呼びかけをしています。

  • 浅水代かき
  • 捕集ネットの活用

詳しくは農林水産省ホームページをご覧ください。

この対策を簡単にいうと「被覆肥料は使用しながら、流出させないように」というふうに解釈できます。確かに先ほど言ったようにプラスチック被覆肥料のメリットは日本の食糧生産にとって大きい。簡単に使用をやめることは困難でしょう。

それでも環境のことを優先的に考えると、どうにか使用しないで済む方法はないものか?そう思わずにはいられません。

自身も農業の生産現場に立つ人間なので、肥料を使用しないで作物を育てる大変さは身に染みています。それを理解した上での努力は今後も続けて行きますが、この現状を変えるためには消費者となる国民が、もっと農業を理解することが必要になってくる。そう感じます。

食べるものに対する苦労を、私を含め忘れてしまっているのではないか。そう思わせるプラスチック問題でした。

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