【基本編】野菜はなぜ育つのか① 光合成によって作られるものとは?
森や道端を見ていると雑草など人が手をかけないのに成長している植物があります。でもなぜ肥料も水やりもしないのに育つんだろう?畑の野菜たちはたくさんの手間と時間をかけてもうまく育たない場合もある。この違いはなんでしょうか。
そんな疑問を解決するために、基本中の基本である植物が成長する仕組みについて考察していきましょう。
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植物は光合成によって成長する
一般的に植物(種子植物)には葉緑体という細胞小器官があります。この葉緑体が光合成を行なって糖とデンプンを作り出します。光合成とは光のエネルギーを化学エネルギーに変換することを意味します。
つまり植物は自分の生体に必要な有機物質を光のエネルギーによって作り出していることになる。そして光合成によって作られる栄養素は、その他多くの生物の栄養素である炭水化物を生成している。
ちなみに生物における3大栄養素は、炭水化物(糖質)・脂質・タンパク質と言われています。
糖とデンプンの役割は
光合成によって作られた糖とはどうなるのでしょうか?これは植物自身の細胞を作るためにも必要ですが、もうひとつ重要な役割がある。
それは、土壌微生物や虫たちを生かし育てて増やすことです。植物が作り出した糖は維管束を経由して根に送られます。そして根っこに運ばれてから少しずつ放出されるのです。この放出した糖を土壌の微生物が餌として吸収する。その後微生物が糞をしてさらに他の微生物が分解していきます。
そうして分解された有機物は炭酸ガス(CO2)やアンモニア・水・硝酸塩・リン酸など、植物が生育するために必要な無機物(元素)となっていくのです。
そしてデンプンはどうでしょう。植物は光合成によって作られたデンプンを利用してタンパク質を生成します。タンパク質は植物の細胞にとても重要なもの、つまり生体活動に不可欠な要素のひとつです。
このタンパク質を生成するときに土の中にあった元素を利用してアミノ酸が生成される。このアミノ酸は虫たちの大切なエネルギー源になります。
植物の生育に重要な微生物
植物が細胞を生成するためには窒素などの硝酸塩やアンモニアが必要です。そしてそれらを生成しているのは微生物の働きが欠かせません。窒素は有機物の分解からだけでなく、空気中からも土壌に取り込まれます。そしてこれをやっているのは根粒菌などの窒素固定菌と言われる細菌(微生物)です。
根粒菌は土壌内で生活している細菌ですが、マメ科の植物の根から侵入してその中で共生していることが多いです。その中で根粒菌は窒素分子をアンモニアに固定して、寄生しているマメ科の植物に供給しています。
つまり、マメ科の植物は自身の体内に栄養素を供給してくれるスペシャリストを持っていることになりますね。恐るべし、マメ科の植物。というか、根粒菌の能力が半端じゃないですね。この作業をヒトがやろうとするとメチャクチャ大変な作業になる。
一般的に使用されている化成肥料は「ハーバー・ボッシュ法」という窒素化合物の製法によるものだが、ものすごい熱量を必要とする。※詳しくはwikipedia「ハーバー・ボッシュ法」を参照してください。
それを自然界の微生物は日常の生活でやっている。自然界って凄いと感じます。
自然界は共生と循環で成り立つ
今回は植物(野菜)がなぜ成長しているのかについて考察してみました。基本的なことですが、自然界では様々な生き物が循環し、それぞれの特徴を活かし合いながら成り立っているんだということがわかります。
感覚では理解していたことも多かったのですが、改めて考えて原理を知るということは重要ですね。
この自然界が行なっている生命活動に悪影響を与えずに、私たちヒトも循環の輪の中に入れるように精進していきたいですね。