食材が値上がりラッシュ。いま考えるべきフェアプライスの意味
今年になって様々なものが値上がりし続けている。その中でも光熱費などのエネルギー価格や食品の値上がりは家計の負担を大幅に圧迫している気がします。政府も対策を立ててくれているのですが、まだまだ家計には厳しい状況が続きそうな予感。
ただ、食材の価値と価格を深く理解するには良い機会ではないか?そんなふうにも思えたので、今日はフェアプライスについて記事にします。
なぜ食材の価格が上がってしまうのか
食材の価格は需要と供給のバランスなど様々な理由で変動します。その中でも最近の価格高騰は世界情勢が大いに関係している。ウクライナとロシアの戦争によるエネルギー問題はみなさんご存知かと思います。
日本は大豆や小麦といった主要農産物の多くを輸入に頼っている状態。小麦の場合だと約80%は輸入物です。豆腐などの原料になる大豆も約80%が輸入で、2020年と比べ1.7倍の価格で推移している。
参考:農林水産省ホームページより
原材料費と製造コストの価格が上がり続けるので、販売価格を上げないと採算が取れず潰れる企業や事業が出てきてしまいますね。
国産の食品も厳しい状況に
外国からの輸入に頼ってもダメなら国産に切り替えたら良いのでは?そう思うかもしれません。しかし日本国民の現在の人口をカバーできる生産力は今の日本にはない。その一番の理由は、土地(農地)の広さだと私は思う。
日本人の大豆の年間需要量(じゅようりょう)は2020(令和2)年で、約350万トンです。
農林水産省ホームページ 「大豆のホームページ(大豆をめぐる事情)」
そのうち約229万トン(65%)はサラダ油などの精油(せいゆ)用に使われ、残りのうち、約105万トン(30%)が、豆腐、納豆、みそ、しょうゆなどの食品用として利用されています。
日本の場合は主要産地の北海道で約80%を生産しています。作付け面積は3万9100ha位です。参考:農林水産省北海道農政事務所統計部https://www.maff.go.jp/hokkaido/toukei/kikaku/osirase/attach/pdf/index-67.pdf
これに対して日本に多くの輸出しているアメリカの作付け面積は約3600万haです。参考:農畜産振興機構
豆腐や納豆、味噌、油など数多くの食品に使用されている大豆。どこに行ってもお金を払えば買えるように大豆製品が普及しているのは、広大な土地で大量生産できている外国の存在があるからです。今のような便利な食生活のレベルを維持しようとするならば日本の国土では難しいでしょう。
さらにいうと、国産の大豆はほとんどが慣行農法で生産されています。その中で使用されている肥料や農薬、そして資材とトラクターなどに使われる燃料費がかかるのです。外国のような広い農地がない上に生産コストが高騰する。そうなれば必然的に価格が高騰しますね。
では、どうすれば良いのでしょう。
今だから考えたい「本当の値段」
食品の価格が高騰するのはもはや避けられない状況です。もしかしたらこの先、世界情勢が安定して価格が下がることもあるかもしれません。しかし、それが安定する保証はどこにもない。ではどうするか?
「本物を知る」
いま食べている食品はどう製造されたのか、その原材料はどのように育てられているのか。自分が買うものがお店に並ぶまでの元を辿って行き、理解することが重要だと思います。
例えば「味噌」を考えてみましょう。
味噌の基本的な材料は大豆・麹・塩です。大豆は通常に育てれば種を蒔いてから収穫するまで約5ヶ月かかります。収穫後は乾燥・脱穀・選別などの手間もかかる。そしてその大豆を蒸してから麹や塩を加えて熟成させ発酵の過程がある。温度管理をしながら、早ければ約6ヶ月後に完成です(熟成みそなら更に長い期間になる)。
つまり本来の味噌をちゃんと作るには約1年かかることになる。その間かかる手間と時間を考えてみましょう。あなたが普段使用している味噌の価格はいくらでしょうか?
このような感じで食品の生産過程を考えてみると、価格の本当の意味がわかってきます。原材料を自分で仕入れて味噌を仕込んでみても良いでしょう。
フェアプライスのために必要なこと
現在、日本の農林水産省が推し進めている「フェアプライスプロジェクト」。アンバサダーに有名芸人のなかやまきんに君が抜擢されています。売る人・買う人・育てる人がフェアで良い値段を考えれるようにというコンセプトです。
この三方よしを実現するのは正直かなりハードルが高いなぁと感じますが、豊かな食生活のためにはクリアするしかないでしょう。
誰かが犠牲になって得をする人がいても、それは一瞬の欲求が満たされるだけで、その先に持続性はない。バランスが崩れると必ず自分の元に悲劇が襲ってくるでしょう。
そして食材を育ててくれる自然環境にも良い方法でするべきです。生産活動は人の手で行いますが、それは自然環境があってのこと。これを大事にしなければ始まりません。
つまり四方よしになることが重要。
そのためには「食」に対する好奇心が必須になってくるでしょう。問題解決をネガティブに考えすぎると、あまり良い方向には進まない気がするし、何にせよ楽しくありません。
豊かな食生活は好奇心から考える。楽しく持続可能なおいしい食のために。